分離症とは?
皆さんは分離症という症状を聞いたことがありますか?今回は成長期のタイミングでよくみられる腰椎分離症についてとガードナーベルトの活用方法を紹介して参りたいと存じます!
腰椎分離症は、腰椎の関節突起間部に生じる疲労骨折であり、特に成長期のスポーツ選手に多く見られる疾患です。 この状態は、急性期と慢性期で症状が異なります。
急性期の症状:
腰椎分離症の急性期は、疲労骨折が発生した直後の状態を指し、以下のような症状が特徴的です。
- 腰痛: 特にスポーツ活動中や腰を反らせる動作で痛みが増強します。
- 体位や動作による痛みの変化: 座位などの安静時には痛みが軽減し、運動時に痛みが増す傾向があります。 特に、腰を反る動作や捻じる動作時に痛みが強くなりやすいです。
慢性期の症状:
適切な治療が行われず、骨癒合が得られなかった場合、腰椎分離症は慢性化し、以下のような症状を呈することがあります。
- 持続的な腰痛: 日常生活でも腰痛が続くことがあります。
- 下肢への放散痛: 分離部の不安定性や神経圧迫により、坐骨神経痛のような下肢の痛みやしびれを感じることがあります。
腰椎すべり症の進行: 分離部位が不安定になることで、腰椎すべり症に進行し、さらなる症状悪化を招く可能性があります。
発症のリスク要因
腰椎分離症の主な原因は、腰椎の椎弓部に繰り返し加わる過度な負荷による疲労骨折です。
1. 繰り返しの腰部への負荷
腰椎分離症は、特に成長期のスポーツ選手に多く見られます。これは、腰を反らす動作やジャンプの着地、腰の回旋動作など、腰部に繰り返し負荷がかかることで、椎弓部に疲労骨折が生じるためです。具体的なスポーツとして、野球、サッカー、バレーボール、バスケットボール、ラグビー、柔道、ウェイトリフティングなどが挙げられます。
2. 成長期の骨の未熟さ
腰椎分離症は、骨が未発達である成長期の子どもが、スポーツの練習などで繰り返し腰に負担をかけることで発症する例が多く報告されています。
3. 遺伝的要因
腰椎分離症は兄弟・姉妹間でともに発生することが知られており、遺伝的な要因が関係していると考えられています。遺伝的に椎間間部は細いと考えられており、そのような人は疲労骨折を起こしやすいとされています。
4. 特定の腰椎への負荷集中
腰椎分離症は、第5腰椎に好発します。これは、腰椎の中でも第5腰椎が傾斜がきつく、圧力のかかりやすい部位であるためです。
5. 身体的要因
腰椎分離症は、腰を頻繁にそらすような動作を含むスポーツをする若者にもっとも頻繁に生じます。これらのスポーツには体操、サッカー、筋力トレーニング、ウエイトリフティングなどが挙げられます。このような腰を反らす繰り返しの動作や負担が椎間間部の疲労骨折の原因になります。
腰椎分離症の治療法
腰椎分離症の治療は、患者の年齢、症状の程度、分離の進行状況などにより異なります。
1. 保存療法
多くの場合、保存療法が第一選択となります。
- 装具療法:
硬性コルセットの装着は、分離部の安定性を高め、骨癒合を促進する効果があります。特に初期段階の分離症では、装具療法とスポーツ活動の休止が推奨されています。
- リハビリテーション:
早期からのリハビリテーションは、筋柔軟性の改善に有効であり、骨癒合に悪影響を及ぼさないとされています。特に、腰部の柔軟性評価テストであるPosterior Lumbar Flexibility test(PLF)の陽性率が高く、リハビリテーションによる改善率も高いことが報告されています。
2. 外科的治療
保存療法で効果が得られない場合や、症状が重篤な場合には、外科的治療が検討されます。観血的治療として、分離椎弓の切除や分離部固定、後方経路腰椎椎体間固定などが行われます。
3. 治療成績と予後因子
腰椎分離症の治療成績は、患者の年齢や分離の程度によって異なります。例えば、学童期の腰椎分離症患者に対する保存療法の骨癒合率は高いと報告されています。一方、潜在性二分脊椎の併発や片側・両側分離の有無が治療成績に影響を及ぼすことが示唆されています。
各患者の状態に応じて、適切な治療法を選択することが重要です。
腰椎分離症とコルセットの有効性
腰椎分離症に対してガードナベルトの活用やコルセットの有用性についてお話ししていきたいと思います。
1. コルセットの種類とその効果
- 硬性コルセット:プラスチックや金属支柱でできており、 腰椎の伸展および回旋運動を強力に制限し、分離部の安定性を高めるために使用されます。特に、骨癒合を促進する目的で処方されることが多いです。
- 軟性コルセット(ガードナベルト): ガードナベルトの様なメッシュ素材とプラスチックを主材としたものです。腹圧の上昇による脊柱への荷重の軽減や、運動制限による脊柱の安定化を目的としています。適応例として、椎間板ヘルニア、すべり症、分離症、圧迫骨折(保存療法)などが挙げられます。
2. コルセットの伸展抑制効果の比較
研究により、硬性コルセットと軟性コルセット(ダーメンコルセット)の伸展抑制効果が比較されています。ある研究では、硬性コルセット装着時の腰椎前弯角が57°、軟性コルセット装着時が51°であり、軟性コルセットでも硬性コルセットに劣らない伸展抑制効果が認められました。特に、腰椎分離症では腰椎の伸展を抑える必要があり、ガードナベルトのような軟性コルセットでも腰椎分離症にも安定性を保ち増悪の予防に役立ちます。
3. まとめ
腰椎分離症の治療において、コルセットの選択は患者の年齢、病期、活動レベルなどを考慮して行う必要があります。硬性コルセットは強力な固定力を持ち、特に初期の分離症において高い骨癒合率が期待できます。一方、ガードナベルトなどの軟性コルセットは、患者の快適性を保ちつつ、適切な伸展抑制効果を提供することが示されています。最適な治療効果を得るためには、医師と相談の上、個々の状況に適したコルセットを選択することが重要になりますのでご相談頂けたらと存じます。
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腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン改訂第 3 版
中野 和彦 腰椎疾患に対する保存的治療 その他の治療法 腰椎分離症の装具療法 各種コルセット間の伸展抑制効果の比較 整形外科 1巻63号 (2013年4月発行)
※この記事は、TEAM PTRD JAPAN®所属のプロの理学療法士が執筆・監修しています。